

頑張っているはずなのに残業が続いてる…

毎日の仕事、細かなタスク、自分ではうまく処理できているはずなのに命じられる残業。どんなに頑張っていても、どんなに用事があっても、断りづらい上司からの残業のお願いや、仲間との進捗ズレで起きてしまう残業に、もううんざり…。ほんとうは残業したくない。
働き方改革の政策が始まって何年も経ちますが、未だなくならない残業問題は、日本の社会問題ともいわれています。残業が手当としてつくのなら、残業したいという人も少なくはありませんが、多くの人は残業したくないと考えていることでしょう。
ここでは、残業が続く理由や残業したくないときの断り方、トラブル回避のコツをご紹介します。
残業を断るのは法律的にOK?拒否できる条件と判断基準

「残業」と聞くとマイナスなイメージがありますが、そもそも残業は会社の業務の一つ。残業したくないと思ったときに、断ることはできるのでしょうか?
労働基準法で定められた残業のルールとは?
仕事にはさまざまなルールがありますが、すべては労働基準法がベースとなっています。
1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけないという法定労働時間があります。アルバイトなどを含め、労働6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必須です。
また、36協定(サブロク協定)と呼ばれる、労働基準法36条に基づいた「時間外(残業)・休日労働に関する労使協定」もあります。「時間外労働を行う業務の種類」や「1日・1か月・1年当たりの時間外労働の上限」を明確にしておくこともルールです。
36協定が結ばれていない場合、残業命令は違法になる?
企業や働く形態により、36協定が結ばれていない場合も存在します。なかでも中小企業やベンチャーなどでは残業についての規約や規制が曖昧で、結ばれていない場合もあるでしょう。
原則として36協定が無いと、残業あるいは休日勤務をさせることはできません。今まではなあなあになっていましたが、2024年4月からは36協定が無い状態で残業などをさせた場合、労基法違反となって罰則が科される場合があります。
断ったら不利益になる?評価や関係性への影響を防ぐには?

残業は、主に上司からの命令や各部署・チームの間でのものが多いでしょう。なかには「この残業を頑張れば昇進に近づくかも」と感じる仕事内容や立場になることもあります。
しかし、労働基準法の範囲での仕事が規定され、2024年より36協定も厳しくなったことで残業そのものに対して懐疑心も持たれています。
評価や関係性への影響を防ぐため、自らも労働基準やそのほか労働者のルール・法律を知っておくことが大切です。
私用があるときに残業命令されたら?伝え方のコツ

友人や恋人との食事の予定、映画や趣味の時間など、自分のための時間を確保するためにあらかじめ予定していた日。残業したくないのに、残業を入れられてしまうのは、とても困りますよね。
ここでは、私用があるときに残業命令された場合の伝え方のコツをご紹介します。
1.感情的に冷静に理由を伝える
その用事がどのようなものであっても、自分にとって大事なものであること、残業したくない旨と先に約束していたことなどを冷静に伝えましょう。
「なぜ残業しなきゃいけないんだ」「残業よりもプライベートが大事!」など感情だけで話をしてしまうと、関係に亀裂が入る可能性があります。冷静に残業できない旨を伝えましょう。
2.やむを得ない事情であることを伝える
これからの用事がやむを得ない事情であり、残業はどうしてもできない旨を伝えましょう。たとえば帰省や実家の用事、公共の施設の閉店・閉館前に駆け込まなければいけないなどでも良いでしょう。
とくに、実家関係や公共機関などに関しては、各々の事情があり深く追及しない人も多いので、理由として使いやすい伝え方です。また、相手も「それならば」と、引き下がりやすいでしょう。
3.押し付けられた場合でも謝罪とセットで伝える

残業したくないのに残業を断る前に、押し付けられてしまい、やるしかない…という状況になってしまうことも少なくありません。「今日残業できる?」などのクッションもなく「今日残業してこれやって」などと押し付けられた場合は謝罪とセットで伝えることを意識しましょう。
「申し訳ないのですが」「片付けたいのは山々なのですが、申し訳ないことに…」など、謝罪をセットにすることで、残業ができなくても仕方がないと上司や同僚なども諦めざるを得ない空気感となります。
4.定時退社が必要な日は事前に伝えておく
週の初めや、予定のある何日か前など、チームや上司・同僚に「何日だけは残業できないから先に共有させてください」などと事前に伝えておくことで、残業を頼まれることを回避できます。
事前に伝えておくことで残業候補からは外れ、周囲も「あの日はダメって言ってたしな」と理解しやすくなるため、関係に亀裂が入ることなく進められるでしょう。
「残業しろ」と圧をかけられたときの対処法

いくら自分の仕事が片付いていても、残業したくない気持ちがあっても上司から「残業しろ」と言われ、圧をかけられてしまえば部下としては反論が難しい状況もあるでしょう。
「残業しろ」と圧をかけられたときの対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。
1.圧に動揺せず、冷静に対応する
高圧的な口調や、上司という立場から、動揺してしまうことは少なくないでしょう。しかし上司であっても、高圧的に命令していいわけではありません。
まずは自分の状況や予定を確認し、冷静に対応しましょう。残業が必要なものなのか、どんな内容かなどを上司など残業を命じてきた人に聞いてみることが大切です。
2.自分の業務状況・優先順位を伝える
ほかの人の仕事を請け負って残業になってしまうのでは、自分の業務が進まない可能性があります。自分の業務状況や優先順位は常に確認し、誰にでも共有できる状態にしておきましょう。
残業を命じられた際も、残業内容が最優先なのか自分の業務が最優先事項なのか、またタスクの量や進捗的にどちらに時間がかかるかなどを伝えて断る、一部だけ引き受けるなど調整できるようにしましょう。
3.日頃から上司とのコミュニケーションの取り方を変える

日頃から上司とコミュニケーションを取り、家庭のことやプライベートでの趣味の時間なども少し話して、残業したくない日や曜日などを伝えておくと良いでしょう。
毎週何曜日は家族の時間にしている、何曜日は絶対に外せない用事があるなど、日頃から会話の中で伝えておくと断るのもスムーズです。上司側も「そういえば何曜日は無理って感じだったな」と配慮してくれることもあるでしょう。
4.パワハラに繋がる場合、記録を残して人事に相談する
どんなに冷静に話をしても、伝え方やコミュニケーション方法を変えても、残業を求めてくる人がいないわけではありません。
パワハラにつながるような、あまりにも高圧的で心身的負担が大きい場合は、録音などの記録を残した状態で人事に相談するなど、対策をとりましょう。メモなどの手書きでも良いですが、録音や録画があると良いでしょう。
角が立たない!上司に納得してもらいやすい言い回し例

残業したくないときの断り方には、さまざまなものがあります。また関係値によっても言い回しは変わってくるでしょう。
ここでは、残業を断りたいときに角が立ちにくく、上司に納得してもらいやすい言い回し例をご紹介します。
1.「〇〇の都合で今日は難しいですが、△△で対応可能です」
「子どもの保育園の都合で今日は難しいですが」「親の介護の申請の関係で」など、さまざまなやむを得ない事情をつくって角が立たないように断りましょう。また「在宅でここまでなら」「何曜日のこの時間なら」など、ほかの対応ができる旨もセットで伝えておくと、上司や同僚なども「じゃあそのときに」と引き下がってくれます。
ただし冠婚葬祭を残業の理由にすると、回数が多い場合に不審に思われる可能性があるため注意が必要です。
2.「現在のタスクを踏まえて、どうしてもこの時間帯に終わらせられない状態です」
「これが終われば大丈夫なんですけど…」「この進捗次第ですね…」など、曖昧な言い方をすると、残業を頼む側も期待してしまいます。現在のタスクをまず完了することを考え、残業できない旨を言い切ってしまいましょう。
「〇〇さんができるかもって言ってた」という曖昧な状態が続くと、いざできなかった際に関係が悪くなったり、その曖昧な時間内でできたのにと思われてしまったりと、無駄な時間が過ぎてしまいます。
3.「現在、少し手が回らない状況ですが、優先順位を見直します」

「現在、少し手が回らない状況ですが、優先順位を見直します」と、まず自分がタスクや業務に追われていて、隙間がないことを伝えましょう。自分の業務が手一杯なのに、残業を引き受けてしまうと、処理が追いつかなくなってしまう可能性もあります。
「手が回らない」以外にも「時間内に終わらせたいものがあり」「先日〇〇さんからお願いされたものが今日中なので」など、残業内容よりも優先タスクがすでにあることを伝えるのも良いでしょう。
4.「本来なら対応できるのですが、ちょうど別の業務に集中しているため…」
たとえば今週必要になる資料を作成している、あと1時間で終わらせなければいけないなど、ほかの仕事に集中しないといけない場合もあります。本来のタスクよりも残業タスクが優先になってしまうと、進むものも進まないという状態で結局また残業続き…と負のループです。
「本来なら対応できるのですが、ちょうど別の業務に集中しているため…」と、ほかの業務の優先度がかなり高い旨を伝えて、ほかの業務を追加できないようにやんわりと断りましょう。
5.「できるだけ早く進めるようにしますが、少しお時間をいただけますか?」
「できるだけ早く進めるようにしますが、少しお時間をいただけますか?」と一言入れることも重要です。自分のタスク処理の速度がわかっている状態であれば、具体的な時間を提案しましょう。
自分のタスクを完了させるだけでなく、残業の内容にどのくらいかかるのかなども確認しておくとスムーズです。残業をしたくないわけではないが、優先順位が高いのはこちらの業務であることををやんわり伝えられます。
6.「急ぎの案件は最優先で対応しますが、本日は難しいです」

残業によって、業務効率が下がってしまう人も少なくありません。翌日出社してからでも間に合いそうなものや、まだ時間があるものもあります。「急ぎの案件は最優先で対応しますが、本日は難しいです」と、優先度を調整してでも残業しなければならないかどうかを判断してもらいましょう。
「急ぎではないなら残業の必要はあるのか」と、相手に残業不要の判断を迫ることができます。
7.「ほかのプロジェクトが終わり次第、対応させていただきます」
同じ残業でも、優先度が高いプロジェクトや資料作成などはあるでしょう。「ほかのプロジェクトが終わり次第、対応させていただきます」と、頼まれた業務の優先度が低いこと、ほかのものが急ぎであることをやんわりと伝えましょう。
残業するのであれば、ほかの優先度が高い業務を先に残業対象としたい旨も伝わるため、ほかの人に頼んだり、優先度を調整したりと対策をとってくれるかもしれません。
トラブルを避けるために意識したい職場でのコミュニケーション

上司や同僚とは、会社でほぼ毎日顔を合わせることになります。一度トラブルになってしまうと、しこりも残ってしまいがち。残業したくないと思ったときにもトラブルを避けられるように、職場でのコミュニケーションは意識するとよいでしょう。
1.角が立たない伝え方をする
残業を頼まれたときは、引き受ける場合も断る場合も、必ず角が立たないように考えてから伝えましょう。誰にでも避けられない事情がある可能性があります。
たとえば「いいですよね、押し付けて帰れて」や「自分は定時で帰るんですね」など、棘のある言い方をすれば、誰でもいい気はしません。残業したくないとしても、角の立つような伝え方をすれば、自分も今後同じように言い返されても文句は言えないのだと心得ておきましょう。
2.感情的にならずに対応する
「なんで残業しないといけないの?」「残業なんてしてられない!」などと言ってしまうと、相手も感情的になって関係に亀裂が入ってしまうことも少なくありません。感情的になると、結局何も伝わらずにネガティブな印象だけが先行しやすくなります。
感情的ではなく冷静に、落ち着いた状態で残業内容や残業について精査しましょう。頼まれた時点で「5分待ってもらっていいですか?」など考える時間をもらうことも大切です。
3.何回かに一回だけ対応する

頼まれた残業に毎回対応してしまうと「あの人はいつも引き受けてくれる」と認定されやすくなります。
何回かに一回、本当に余裕があるときにだけ対応するようにしましょう。自分だけが我慢したり、引き受けたりするのでは、業務量が偏ってしまいます。みんなでやるべき仕事量を自分だけでこなすのは、お互いのためにも会社のためにも良くありません。
4.本音で話しやすいよう普段からコミュニケーションをとる
残業したくないと感じる人がほとんどで、積極的に残業したい人は少ないでしょう。誰もが思っていることだからこそ、「残業したくない」と口にしても大丈夫な空気感になるように、普段からコミュニケーションを怠らないようにしましょう。
「ごめん、今日はどうしても残業したくない」と本音で言っても問題ない関係ができると、スムーズにお互いのことを気遣えるでしょう。
5.感謝の言葉を増やす・ポジティブ発言を増やす
感謝やポジティブな言葉は、周りにも良い影響を与えて、チームや部署内の空気感も明るくしてくれます。
たとえ残業であっても「いつも評価してくれるしな」「こういうとき助けてもらったからな」など、ポジティブに捉えて残業を引き受けてくれることもあるかもしれません。また「残業したくない」と口にしても、良い空気感を保てます。
6.仕事の進捗や課題は事前に共有しておく

仕事の進捗や課題は、チームや上司に常に共有しておきましょう。毎日の共有でなくても良いですが「現在こういう状態で、あとどのくらいで完了する」「集中したいので今週はできれば他タスクを増やしたくない」など、備考事項も一緒に共有しておくことによって、トラブルを未然に防げるでしょう。
それでも無理なら…人事・労基・転職など次のステップも

上司からの圧力は、心身ともに疲弊します。それでなくとも残業が続けば消耗し、自分の時間を確保できずに、仕事だけの日々になってしまい感情やモチベーションも失われてしまうでしょう。
残業を断ることで、職場の人間関係が悪くなったり、なんとなく以前と空気感が違ったり…。そのように感じてしまう人も少なくありません。
さまざまな伝え方や対処法を試し、それでも無理なら、人事・労基・転職など次のステップも考えてみましょう。仕事は人生の一部であり生活の多くを占めますが、寝食やプライベートの時間を削ってまでするものではありません。
パワハラに変わったときの対処法

残業依頼は、関係性があれば断ることもできます。しかし場合によっては残業しなかったこと、あるいは残業に対して嫌な顔をしたことをきっかけにパワハラなどに変わっていく場合も。
ここでは、パワハラに変わってしまったときの対処法も知っておきましょう。
1.第三者に相談する
同僚や上司とは異なる第三者に相談してみましょう。自分の家族や友人、恋人、あるいは同じ会社であっても別部署や別の上司など、客観的な意見をくれる人に相談することで、見え方が変わることもあります。
また、解決策や打開策などを示してくれることもあるでしょう。第三者の意見は、自分を振り返るのにも良い方法です。
2.社内の相談窓口や産業医に相談する
多くの企業には、社内の相談窓口や産業医が設置されています。あまりにも高圧的に残業を押し付けられたり、残業したくない旨を伝えても叶わなかったりなど、心身に負担を感じたときはすぐに相談してみましょう。
会社の定める相談窓口や産業医は、些細なことでも相談できる窓口でもあります。少しでも会社や仕事・残業のありかたなどで不安を抱えたら、相談しに行ってみましょう。
3.同じ問題を抱える同僚と協力する

同じような問題を抱えている同僚や悩んでいる人がいる場合は、協力して証拠や記録も取るようにしましょう。協力して残業に対応するのか、社内窓口と連携するのかなど、相談しながら自分たちの環境を整えることが大切です。
同じ問題を抱えている同僚たちが何人もいるのであれば、残業せざるを得ない仕事の進め方や仕事量が原因となっている可能性があります。
4.証拠を集めて法的処置を考える
何も改善されなかったり、さらに残業量が増えたりしている場合は、証拠を集めて法的措置を考えてみるのも一つの手です。残業に関しては、規定時間があります。その規定時間を超えたり、残業した分が支払われなかったりするのは違法です。自分が残業した時間や、残業を命じられたときの記録を残しておきましょう。
残業を減らしてモチベーション向上を目指そう!

働き方改革などが始まって数年経っても、日本では残業が当たり前で大きな変化は見られません。もちろん繁忙期だけは仕方ないということもあれば、給与の問題も含めて残業をしないと…と考えている人も少なくないでしょう。
しかし、本来であれば残業は良しとされているものではありません。定時で帰宅し、自分の時間や家族の時間も大事にすることで日々の活力にもなり、仕事への姿勢も変わっていきます。
できる限り残業を減らし、日々のモチベーション向上を目指していきましょう。
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