

あの頃に戻りたい……昔を思い出してはつらくなる……

心が満たされずに、ぽっかりと穴が空いている感覚がして苦しい。昔はよかったのにな…なんで今の私はこんな状況に置かれているんだろう。
社会に出てから、人の顔をうかがったり、ちょっとしたミスで叱責されたり。時には自分の心を押し殺しながらも、目まぐるしく変わる日常に振り回されることにほとほと疲れ果てたとき、ふと昔にあった幸せな出来事が頭をよぎると、今の状況から逃げ出して、充実していた昔に戻りたい…と思ってしまうことも。
今を生きていくためには、楽しかった過去に目を向けていても苦しくなるだけ。ただ、昔には戻れないとわかっていても、なかなか過去に戻りたい気持ちが消えずにつらくなることもありますよね。
心から楽しんでいた昔に戻りたいと思ってしまうときに、私たちはどうしたらよいのでしょうか。
過去に戻りたいと思う原因は?

無理だとわかっているのに、昔に戻りたいと考えてしまう。過去と今を比較して、落ち込んでしまう。
過去ばかりに意識が飛んでいると、今目の前にある大切なものを見逃してしまったり、取り逃してしまったりすることもわかっている。それでもなお、私たちが昔に戻りたいと思うのはなぜでしょうか。
1.“今”に不満を感じている
昔に戻りたい気持ちの裏側には、今の生活への不満が隠れていることが多くあります。また、忙しい毎日に流されてしまい、“今”を生きている実感が薄れている可能性も。目の前の状況をマイナスに捉えていると、逃げ出したい気持ちになって、昔にあった思い出に逃避するケースが多いのです。
もっと充実した毎日を送りたいと思いながらも、過去のように過ごすのは難しいと諦めてしまっていると、昔に戻りたい気持ちにいつまでも縛られてしまいます。
2.つらいことがあり落ち込んでいる
恋愛や仕事、対人関係に悩みを抱えているときも、順調だった過去を思い出して、昔に戻りたいと考えてしまうかもしれません。つらいことがあって落ち込んでいるとき、ストレスが溜まり心が弱っているときほど、楽しかった過去の記憶がよみがえってきやすいです。
たとえば失恋したときに、楽しかった思い出ばかり頭をよぎる経験をした人も多いのではないでしょうか。
幸せを感じていた過去と今のギャップに苦しんでいると、自己肯定感が低下する恐れもあります。
3.後悔していることがある
過去に後悔していることがあると、昔にタイムスリップしてやり直したいと思ってしまうかもしれません。過去は変えられないとわかっていながら、「あのときもっとやりようがあったのでは?」「どうしてあんなことをやってしまったんだろう」と後悔を引きずっている人も多いかもしれませんね。
失敗やトラブルは、時に人の心に大きな傷を残します。昔に負ってから、今もなお癒えない傷を抱えていると、いつまでも過去の後悔に囚われてしまい、やり直したいと願ってしまうのです。
4.昔に仲良くしていた友人と再会したため
昔に仲良くしていた友人と再会して、思い出を語り合っていると、充実していた過去の記憶がよみがえり、あの頃はよかったな、昔に戻りたいなと感じることがあります。全力で生きていた学生時代を思い出して、忙しさから自分のことが後回しになりがちな今の生活と比較してしまうことも。
また、昔に仲良くしていた友人が出世していたり、結婚や出産を叶えていたりすると、自分と比較して苦しくなってしまいがち。現状から目を背けたくて、楽しかった過去の思い出に逃避してしまうかもしれません。
過去に戻りたいと思う人の5つの特徴

昔に戻りたいと思ったことは、誰しも一度はあるはず。でも、頻繁にその思考が湧いてくる人は、共通点を持っています。もし過去に戻りたいとよく考える人は、これから紹介する特徴に当てはまっていないかチェックしてみてください。
1.気持ちの切り替えが苦手
失敗やミスをいつまでも引きずってしまう。オンとオフをうまく切り替えられずに、いつでも緊張している気がする。
気持ちの切り替えが苦手な人は、過去に囚われやすいです。特に後悔し続けていることがあれば、いつまでも脳内で反省会をやめられず、昔に戻ってやり直したいと考えてしまいがち。
また、昔に戻れないと頭ではわかっていながら、楽しかった過去に戻りたい気持ちと今の自分を切り離せない人も。
過去は過去、今は今と前向きに考えられる人がいる一方で、過去と今を切り離せずに悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
2.周りの人に影響されがち
周りの人に影響されがちな人も、後悔を残してきた昔に囚われやすい傾向にあります。これまで、親や友人などの大切な人の意見に合わせて自分の気持ちを押し殺してきた人は、「自分の意思で選択した」と感じる経験が少なく、昔に戻って自分で人生を選び直したいと考えることも。
周りの人に影響されてきた結果である今に不満を感じていると、余計に「自分で選んだら今頃どうなっていたのだろう」と昔に意識を向けてしまい、悶々としやすいでしょう。
3.今、熱中できるものがない
過去に戻りたいと考える人の中には、今の生活の中で熱中できるものがない人もいます。この場合、昔に努力を積み重ねてきた経験がある人があてはまりやすいです。
今、熱中できるものがなく淡々と日常を過ごしている中で、ふと昔に目標に向かって努力していた頃と今を比較してしまうのです。
夢中になれるものがあると、毎日の生活に彩りが生まれて、充実感を持てるようになります。今を生きられるようになると、昔に意識が飛ぶ回数が減っていくのです。
4.完璧主義で失敗を引きずりやすい
完璧主義の人は、「もっとこうすればよかった」「あのとき違う選択をしていれば…」と過去の出来事を悔やみがちです。小さなミスでも自分を責め続け、やり直せない現実に苦しむことが多いでしょう。
理想と現実のギャップを受け入れるのが苦手なため、過去にこだわり続けてしまいます。大切なのは「過去の失敗=成長の糧」と考えること。完璧を求めすぎず、今できることに目を向ける習慣をつけると、気持ちが少しずつ前向きになります。
5.変化を恐れて現状維持を選んでしまう
「昔の方がよかった」と思う人は、新しい環境や変化に対して不安を抱えやすい傾向があります。今の生活に不満があっても、「変わることで悪くなったらどうしよう」と考えてしまい、前に進めなくなってしまうのです。
しかし、人生は常に変化するもの。変わることを恐れず、新しいことにチャレンジすることで、過去への執着が薄れ、未来に期待を持てるようになります。小さな一歩からでもいいので、新しい習慣や挑戦を始めてみましょう。
本気で過去に戻りたいと思ったときの対処法

無理だとわかっているのに、本気で過去に戻りたいと考えてしまうのは、とても苦しいものです。私たちが、昔に囚われる自分としっかり決別して今を生きていくには、何ができるのでしょうか。ここからは、今日からできる対処法を紹介します。
1.過去に戻りたいと思う自分の気持ちと向き合ってみる
昔に戻りたいと思う自分と向き合う時間を取ってみましょう。過去に戻りたいと感じる理由、過去の後悔した出来事、今に不満を抱えている事実…1つずつ丁寧にすくい上げて受け入れてあげてください。
現状をしっかり受け入れることは、昔に執着する自分を手放すための第一歩。自己対話を深めていくと、自分なりの過去に戻りたい理由が言語化できたり、自然と今に目を向けられたりと、変化が生まれてくるはずです。
2.新しいことにチャレンジする
新しいことにチャレンジすることも、昔に戻りたい自分から卒業するのにおすすめの方法です。
新しいことを始めると、毎日に刺激が生まれて心が豊かになっていきます。一日の中で歩く時間を増やしてみる、週に一冊でも本を読んでみる、週末だけでも自炊をしてみる…お金をあまりかけなくても日常に変化をプラスできると、ワクワクしながら朝を起きられるようになるかもしれません。
また、新しいことに取り組んだ自分自身を認めてあげられることも、この方法のメリットです。
自己肯定感が上がって、今の自分を好きになれるはずです。
3.過去と同じことをやってみる
どうしても充実していた昔に囚われてしまうなら、過去と同じことに再チャレンジするのもおすすめです。
昔に頑張っていた習い事や勉強を再開したり、充実していた時期にハマっていた音楽や本に触れたり、楽しかった昔にタイムスリップするつもりで過去と同じことに取り組んでみると、今の自分が昔に比べて成長していることに気づけるはず。
また、いつまでも過去の後悔に囚われていても仕方ないと気持ちに踏ん切りがつくことも。過去から学んで、次に進もうと自然に思えるはずですよ。
4.具体的な目標ややりたいことを作る
新しく夢中になれる目標ややりたいことを具体的に考えて、実行に移しましょう。具体的な目標に向かって頑張れている自分を想像すると、少し気持ちがウキっとしませんか?その姿を思い描けるということは、近い将来あなたもそうなれているはず。
目標に向かって努力したり、やりたいことに熱中したりすることで、次第に昔に思いをはせる回数が減って「今が楽しい」と思えるようになるでしょう。「昔に比べて今は…」と比較して落ち込むこともなくなるはずです。
5.過去の経験を活かして「今」をより良くする
「過去に戻りたい」と思うのは、過去に何か後悔や未練があるからかもしれません。しかし、過去を変えることはできなくても、その経験を未来に活かすことはできます。
たとえば、「もっと勉強しておけばよかった」と思うなら、今から新しい知識を学ぶことができます。「あのときの人間関係を大切にすればよかった」と思うなら、今の人間関係を見直し、大切にすることが可能です。
過去を振り返ることで、今の自分にできることを見つけ、より充実した人生を送ることを意識してみましょう。
6.「戻りたい過去」を具体的に書き出して分析する
漠然と「過去に戻りたい」と思うのではなく、どの時期に戻りたいのか、なぜ戻りたいのかを具体的に書き出してみましょう。「あの頃は楽しかった」「あの時に戻れたらやり直せる」と思うかもしれませんが、実際に過去に戻れたとしても、同じ状況が再現されるとは限りません。
紙に書き出すことで、自分が本当に求めているものが何なのか整理でき、今の自分に何が足りないのか、何を改善すればよいのかが見えてくるはずです。
7.環境を変えて新しい景色を見る
過去に囚われてしまうのは、今の環境に刺激が足りていないからかもしれません。同じ場所、同じ人間関係、同じ習慣の中にいると、どうしても「過去の方が良かった」と感じてしまいやすくなります。思い切って引っ越しをしたり、新しい職場や趣味のコミュニティに飛び込んだりすることで、気持ちがリフレッシュされ、過去よりも「今」に意識を向けられるようになるでしょう。小さな変化でもいいので、新しい環境を取り入れてみてください。
8.「過去の自分が今の自分を見たらどう思うか」を考えてみる
過去に戻りたいと感じるときは、今の自分に満足できていないことが多いです。しかし、過去の自分が「未来の自分」を見たらどう感じるでしょうか?「大人になったらこうなっていたい」と思っていた自分の理想に、少しでも近づいている部分はないでしょうか?
過去の自分が憧れていたことや、今の自分にできることを考えることで、過去に囚われるのではなく、今の自分を大切にするきっかけになります。
9.小さな「新しい思い出」を積み重ねる
過去が輝いて見えるのは、そこに楽しい思い出や大切な経験があったからかもしれません。それならば、今の自分も新しい思い出を作ることを意識してみましょう。
大きなことをする必要はなく、「新しいカフェに行く」「新しい本を読む」「普段とは違う道を歩いてみる」といった小さなことでもOK。少しずつ新しい経験を積み重ねることで、過去ではなく「今」に目を向けられるようになります。
過去よりも今を好きでいられるように

楽しかった昔に思いをはせて、センチメンタルな気持ちになることは誰しもあります。でも、昔にあった思い出を美化して過去に戻りたいと何度も思っていては、今の自分を嫌いになってしまうかもしれません。
私たちが一番大切にするべきなのは、今の自分だと忘れないでください。昔に囚われて今を憂いるのではなく、今の自分を好きになる努力を積み重ねましょう。
過去よりも今を愛せるようになったあなたなら、過去から学び、今この瞬間を幸せで満たせるはずです。
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