婚姻、結婚、夫婦になること
「この人と一緒に人生を歩みたい」そう考えたときに、相手と結婚して夫婦になることを考える人もいるでしょう。まだ心に決めた相手がいない場合でも、「婚姻」や「結婚」という言葉自体に憧れている人も少なくないのではないでしょうか。誰にとっても、婚姻や結婚は人生の中でも1、2を争うような大きなライフイベントとなるものですよね。だからこそ、結婚する前の判断材料として必要な知識を押させておきたいところです。
現代は、さまざまなカップルの形があります。必ずしも婚姻や結婚という形をとる人ばかりではありません。それでは、婚姻や結婚をすることにはどのような意味があるのでしょうか。今回の記事では、婚姻や結婚など夫婦になることに関することについて解説します。法律上夫婦になるためにクリアすべきポイントやメリットについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
「夫婦になること」にかかわる言葉・意味
婚姻・結婚・入籍など、夫婦になることに関する言葉にはさまざまなものが存在します。まずは、それぞれの言葉が持つ意味について解説します。
婚姻
婚姻とは、男女双方が婚姻の意思を確認し、役所に婚姻届けを提出することで法律上夫婦として認められることを意味します。婚姻した夫婦は、お互いに協力し助け合って生活することを法律で義務付けられます。
夫婦の日常生活にかかる費用は、2人で分担することが必要です。日常生活に関する債務も連帯して責任を負うことがあります。また夫婦の間に子どもができた場合は、夫婦がともに親権を持って責任を負うことになります。子どもの日常的なお世話から子どものための契約まで、子ども利益を一番に考えて協力しなければなりません。
結婚
結婚とは、男女が夫婦になることです。婚姻とほぼ同じ意味で使われます。
ただ、結婚の考え方は時代によって変化するところがあり、現在は役所に婚姻届を提出せずに特定のパートナーと家庭を築く事実婚の夫婦も存在します。恋人がデートをする相手であるのに対し、夫婦は生活をともにする相手です。
入籍(法律婚)
入籍とは、既存の戸籍に入ることを意味します。入籍と婚姻や結婚は混同されがちですが、本来は別の意味を持つ言葉です。
お互い初婚であれば、親の戸籍から抜けて2人で新しい戸籍を作ることになるので、入籍にはあたりません。一方で、どちらかが再婚であって既に自分1人の戸籍を作っている場合、結婚して相手を筆頭者とする戸籍に入るのは入籍となります。
入籍は結婚以外でも、両親の離婚や再婚、養子縁組などにともない、戸籍が別になった子を父母の戸籍に入れる場合にも用いられます。
婚姻に関する法律|結婚するためにクリアすべきポイント
結婚するときには、ただお付き合いするときや同棲を始めるときとは異なり、さまざまな条件を満たさなければなりません。ここからは、結婚するためにクリアすべきポイントについて説明します。
結婚意思の合致
結婚して夫婦になるためには、双方の婚姻意思の合致が必要になります。どちらか一方が婚姻を望んでいても、もう一方が賛同していない場合には婚姻は認められず、結婚はできません。
結婚適齢に達している
日本で結婚が可能な年齢は、男女ともに18歳以上です。以前は、女性は16歳以上でしたが、2022年4月の法改正で18歳に引き上げられました。
同時期に成人年齢が20歳から18歳に引き下げられているため、現在は「成人年齢=結婚可能年齢」となっています。以前のように未成年が親の同意を得て結婚できるケースはありません。逆に、高校生であっても18歳以上であれば親の同意なく、自分たちの意思で結婚することが可能になりました。
重婚でない
日本は一夫一妻制を取っており、単婚ではない重婚の形は認められていません。すでに配偶者を持っている状態で、他の異性と結婚することは不可能です。事実婚の場合も重婚を認められない規定の対象となりますが、法律的に保護されるかどうかはケースバイケースとなります。
別の相手と結婚したい場合は、今の配偶者と離婚する手続きを取らなければなりません。以前は離婚後の女性には再婚禁止期間が定められていましたが、現在は撤廃されています。前回の配偶者と離婚していれば、すぐに別の相手との再婚が可能です。
近親婚でない
日本では、近親婚が禁止されています。
祖父母・父母・子・孫などの直系血族との婚姻は、認められていません。また、おじ・おば・兄弟・姉妹・甥・姪などの三親等以内の血族との婚姻もできません。一方で、親戚であってもいとことは結婚が可能です。
また実際には血がつながっていない場合でも、養親と養子は親子とみなされるため婚姻はできません。たとえ養子縁組での親子関係を解消した後であっても、両者の婚姻は認められていません。
戸籍法の定める届出(婚姻届)をする
法律婚として承認されるためには、婚姻届けを役所に提出する必要があります。
婚姻届の用紙は役所でもらえます。届自体は必要事項を記入して押印するだけの簡単なものです。ただし、場合によっては戸籍謄本などの書類を求められることがあります。
また婚姻届の提出には承認が必要です。承認は18歳以上なら誰でもなることが可能で、年齢以外に承認に関する規定はありません。婚姻届けの提出に必要な承認は2人以上です。新郎新婦側から1人ずつでも、どちらかの側から2人でも大丈夫です。そして、婚姻届はどこの役所でも提出できるわけではありません。基本的に夫婦どちらかの本籍地か住居地を管轄する役所・出張所での提出が必要です。
ただし、結婚式を挙げた場所を管轄する役所などであれば、例外的に本籍地や居住地の役所以外での提出が認められる場合があります。平日に婚姻届を役所に持参することが難しい場合には、時間外窓口を設けているところであれば、夜間や土日祝日でも提出できます。
婚姻で得られるものとは
婚姻すると夫婦にはさまざまな義務が発生します。婚姻に伴う義務は守ることを怠れば、離婚原因ともなり得るものです。ここからは、婚姻によって発生する義務についてご紹介します。
同居の義務
婚姻関係を結んだ夫婦には、同居の義務が発生します。
夫婦で合意した上で別居する場合にも、お互いの生活レベルを同等に保つことが必要です。生活費は、お互いに負担し合わなければなりません。お互いの合意がなく、長く別居状態が続く場合には同居の義務の「悪意の遺棄」と見なされる場合があるため、注意が必要です。
双方が同意していない別居は「夫婦生活の破綻」とみなされ、離婚理由として成立します。そのため、離婚を目的とした人がわざと別居するケースも見られます。
最近は、「別居婚」という方法がとられるケースも見られます。別居婚については以下の記事も参考にしてみてくださいね。
【別居婚】離婚率は高い?別居でうまくいく・うまくいかない夫婦の違いとは
相互の扶助義務
婚姻すると、夫婦には相互の扶助義務が課されます。夫婦の扶助義務とは、お互いが同じレベルの生活を送れるようにする義務です。
収入の高い方が収入は収入の低い方の婚姻費(夫婦の生活に関する費用)を支払う必要があります。生活費を入れないような行為は、悪意の遺棄と見なされて離婚理由として法的に成立するものです。また、病気の相手を看病せずに放置するような行為も同様です。
夫婦がそれぞれ仕事を持っている場合には家事を分担したり、子どもの養育に関して双方が責任を負ったりするのも、扶助義務に含まれます。
協力する義務
婚姻した夫婦には、お互いに協力して生活を送る義務もあります。夫婦となったら、お互いの生活を支え合わなければなりません。
悪意をもって相手に嫌がらせをしたり迷惑をかけたりするのは、婚姻の協力義務に対する悪意の遺棄となります。ただし、単純に何かに対して協力しようとしないような軽い場合の場合は、協力義務の違反にならないケースが多くなります。
貞操の義務
婚姻関係を結んだら、他の相手との不貞は認められません。配偶者以外の相手と性的関係を持つことは、婚姻の貞操義務への違反となります。
法律にはっきりと明記されているわけではありませんが、配偶者以外との肉体関係以外にもキスやハグ、メールのやり取りなどでも離婚や慰謝料請求の理由として成立するケースが多く見られます。特定の相手との不倫関係も、貞操義務から許されません。
夫婦になることで得られるメリット
相手と生活を共にしたいと思ったときには、同棲という形を選ぶことも可能です。必ずしも婚姻関係を結ぶ必要はありません。しかし、婚姻して夫婦になることで得られるメリットも存在します。
精神的な安定を得られる
婚姻関係を結び夫婦になることで、2人の関係は安定したものとなります。社会的にも認められやすくなり、法律からも守ってもらえるのです。婚姻関係を結べば、簡単に関係の解消はできなくなります。関係が盤石なものとなることで、精神的に安心できる人も少なくないでしょう。
経済的に安定する
相手と婚姻関係となると、経済的にも安定します。お互いへの扶助義務が発生することによるだけではありません。社会保険や税制面などでも優遇を受けられるようになるのです。
共働きであれば、それだけで世帯収入は大きく増加します。2人で生活することで、生活費を押さえる効果もあるでしょう。それぞれに独立して経済を管理するよりも、効率がよくなることが考えられます。
夫婦になる前に必要な手続きを知っておこう
婚姻関係を結んで夫婦になることで、得られるメリットがあります。同時に、婚姻関係を結んだ2人にはさまざまな義務も課せられることになります。そして、夫婦になるためには条件をクリアすることや手続きも必要です。
好きな人と夫婦になりたいと考えたときには、婚姻のメリットや義務、事前に必要な手続きについてもよく調べておきましょう。必要な知識を身に着けることが、きっと後悔のない幸せな結婚へとつながります。