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パワハラとは?ハラスメントの定義や基準・対策&予防策も

Edit by 羽莉花南

パワハラの意味とは

パワハラとは、パワーハラスメントの略称です。職場においての優越的な立場から、抵抗や拒絶ができない相手へのハラスメントのことを指します。業務で必要な範囲を超える言動で、かつ労働者の就労環境が害されるものはパワハラです。

パワハラという言葉自体が浸透しても、「これってパワハラ?」「どこからがパワハラ?」とイメージだけだとあいまいで、わかりにくいところがありますよね。社員が理不尽なパワハラに耐えたり、上司が無意識のうちにパワハラを行ってしまったりすることのないよう、具体的にパワハラとはどのようなものなのかをしっかり知っておきたいところです。

今回の記事では、パワハラの定義や種類について詳しく解説します。パワハラに遭遇した際の対応策やパワハラを防ぐための予防策もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

パワーハラスメントの定義

パワーハラスメントとは、職場で相手が抵抗や拒絶ができない関係性において、業務に必要あるいは相当と考えられる範囲を超えた言動により、労働者の職場環境を害することです。

まずは、パワハラとは何かの定義について詳しく解説します。

職場での地位や立場を利用している

ハラスメントを行う側が職場での立場を利用していることが、パワハラの前提条件となります。上司や先輩からの要求だと理不尽に感じても簡単に断れませんよね。相手が自分を雇用したり評価したりする立場の人であれば、なおさらです。

パワハラは、職場での優越的な立場を背景としています。しかし、最近では立場が下の人から上の人に対する「逆パワハラ」も問題になっています。

部下が上司に対して「上司として使えない」といった発言をしたり、SNSで悪口を言い合ったりしているケースです。パワハラとなることを恐れて、部下に強く出られない上司が増えたことが原因の一つと考えられています。

業務で必要以上に指示や命令をおこなう

パワーハラスメントとは、業務で必要なもの以上の範囲での指示や命令を行うことを指します。私用の雑務を命じるのはパワハラです。必要以上のノルマを与えたり達成不可能な業務を強制したりすることもパワハラに該当します。

逆に何も仕事を与えない嫌がらせもパワハラです。業務において相当と考えられる範囲を超えた指示は、すべてパワハラとなりえます。

相手に精神的苦痛を与え、職場環境を害する

ハラスメントとは、相手に肉体的あるいは精神的な苦痛を与えて尊厳を傷つけることです。職場での優越的な関係を利用して業務に必要な範囲を超えた言動により、相手を傷つけて労働環境を害した場合にはパワハラとなります。

身体的に攻撃する行為だけではなく、無視したり人格を否定したりして相手を精神的に苦痛を与える行為もパワハラです。上司や先輩などからのいじめや嫌がらせによって、立場が下の人が仕事をしづらくなれば、それはパワハラとみなされます。

これってパワハラなの?判断する基準とは

実際に職場でパワハラを受けても、とっさにそれがパワハラかどうか判断するのは難しいですよね。また、上司もパワハラの基準がわからないために、うまく部下を叱れないケースが出てきています。

ここからは、パワハラかどうかを判断するための基準についてご紹介します。

言動に人格を攻撃するようなものが含まれていないか

言動に人格や能力を否定するものが含まれている場合、即パワハラと判断できます。人格を攻撃するのは業務に必要な範囲を超えた言動であり、否定された側は尊厳を傷つけられて精神的なダメージを負うことになるでしょう。「バカ」「消えろ」などのワードはもちろん、「小学生でもわかる」「こんな簡単なこともできないのか」などの言葉も人格や能力を否定する言葉です。

また、本人の前での言動だけではなく、陰口もパワハラとなりえます。あまり認識されていませんが、優位性のある立場の人が、他の職場の人を巻き込んで陰口を言ったり悪い噂を流したりして、労働者の職場環境を害するのもパワハラです。

正当性がある指導となっているか

指導に正当性があるかどうかが、パワハラの判断基準となります。業務遂行のために正当性がある指導には、労働者は従わなければなりません。パワハラをしないとは、部下を叱らないということではないのです。

指導は、業務に必要な範囲内で行われなければなりません。前述したように人格や能力を攻撃する表現を含むとアウトです。また、正当性のある内容であっても、人前で叱ると指導を受けた側の尊厳を傷つけて、パワハラとなるおそれがあります。

言動自体が相手の指導を目的とするものとなっているか

職場内での指導は、業務範囲内で行なわなければなりません。言動が相手を指導する目的からズレていた場合には、パワハラとなりえます。

上司の気分によって言葉が強くなったり八つ当たりしたりするのは、指導ではなく嫌がらせです。部下を自分の思い通りに動かそうとしたり、それに答えられない場合に叱責したりするのも指導を目的とする範囲を超えています。

パワハラの中にも種類がある

パワハラを判断するのが難しいのは、その範囲の広さにあります。また、同じ言動に対しても個人の受け取り方が異なることも関係しているでしょう。

ここからは、パワハラの種類について詳しくご紹介します。パワハラとは何かを種類ごとに整理できれば、判断しやすくなるでしょう。

身体的な攻撃をする

職場での立場の優位性を背景にした殴る、蹴るなどの身体的な攻撃はあきらかなパワハラです。このご時世にあからさまな暴力は存在しないと思われるかもしれませんが、なくなったわけではありません。

あからさまに痛めつけなくても、胸ぐらや腕をつかむのも身体的攻撃です。「ちょっと脅そうとしただけ」であってもパワハラになります。服を引っ張ったりファイルで頭を叩いたりするのも、パワハラに該当します。モノを投げつけるのもNGです。

精神的な攻撃をする

パワハラとは、精神的な攻撃も指します。体に触れていなくても、言葉や態度で相手を精神的に傷つけて尊厳を損なえばパワハラです。

指導のつもりでも、暴言や人格を否定する言葉が混ざればパワハラとなります。また、人前で大声で叱責するのも、個人の尊厳を傷つける行為です。さらに、必要以上に長時間叱責したり説教したりすることも精神的な攻撃となりえます。

必要以上の要求をする

パワハラとは、業務に必要な範囲あるいは相当と考えられる範囲を超えた要求をすることです。私用の雑務を押し付けることはもちろんですが、必要以上に厳しいノルマを与えたり、達成不可能な量の業務を強制したりするのもパワハラとなります。

新入社員に必要な教育をおこなわないまま業務を押し付けるのもパワハラに該当します。また、業務とは関係のない職場の飲み会への参加を強制するのもパワハラです。

個人の侵害をする

個人のことに対して、踏み込みすぎるのもパワハラとなりえます。相手が求めていないにもかかわらず、仕事とは関係ないプライベートのことに口出しすべきではありません。休みの理由をしつこく聞いて、相手に不快な思いをさせればパワハラです。

また、部下が上司にした相談内容を上司が勝手に周囲の人に話すのも、個人の尊厳を傷つけて職場にいづらくさせる行為です。性自認や不妊治療など、本人にとって繊細な事柄もあります。本人の了承なく吹聴すればパワハラです。

環境から疎外し、孤立させる

パワハラとは、相手の労働環境を害する言動のことを指します。あからさまに本人を攻撃していなくても、職場の環境から孤立させるのはパワハラです。

直接本人に暴言を浴びせていなくても、陰で悪口を言ったり悪い噂を流したりして、その人の立場を悪くするのはパワハラに該当します。仕事を与えすぎるだけではなく、仕事をさせないのもパワハラです。パワハラとは、必ずしも直接攻撃したりいじめたりすることだけを指すわけではありません。

もしパワハラに遭遇したら…どんな対策があるの?

実際にパワハラに遭遇したら、どのように対策すべきかわからないという悩みを抱える職場は多いもの。ここからは、パワハラに遭遇した際の対応策について、一つずつ順番に説明します。ぜひ参考にしてください。

事実関係を確認する

パワハラに遭遇したら、まずは正確に事実確認を行うことが大切です。調査する人は1人の場合もありますが、複数人で調査を行ったほうが客観性を保ちやすくなります。

相談者本人の話を聞く他、相談者の了承を得たうえで行為を行った人や周囲の人からもヒアリングを行います。内容に食い違いがあれば、何度かにわけて話を聞くことが必要です。メールの履歴や録音などがあれば、提出することで事実を確認する手がかりとなります。

加害者側へ注意をおこなう

パワハラがあった事実が確認できれば、加害者に注意を行います。同じことが繰り返されないように、指導しなければなりません。

しかし、パワハラの加害者を責めないようにすることも大切です。加害者を責めても過去は変えられません。これからどうしていくかが重要です。

加害者も被害者と同様に傷ついている場合があります。パワハラとは自覚せずに行う人も多いものです。注意を行う際は、今後加害者を職場で孤立させないようにする配慮も欠かせません。

被害者側をフォローする

パワハラが起こったときには加害者への指導だけではなく、被害者へのフォローも忘れないようにしなければなりません。パワハラを受けた被害者は傷ついています。メンタルヘルスのフォローアップが大切です。

場合によっては、加害者と引き離すための部署移動を検討する必要があるかもしれません。パワハラによって休業しているケースにおいては、本人が復職を望んでいる場合にはそのフォローも必要となります。

状況が酷い場合は加害者へ処分等おこなう

パワハラの内容や程度がひどい場合には、加害者への処分が必要です。人を傷つける行為は、軽いものではありません。一般的な処分の内容としては、減給や降格などが挙げられます。

何度もパワハラを繰り返すようであれば、軽い処分では意味がないということになるでしょう。パワハラを繰り返すことは、職務への適性がない状態と判断できます。その場合は、通常解雇が許容されることも考えられます。

パワハラを防ぐには?予防策を5つご紹介

パワハラが起こったときの対策を考えておくことは大切ですが、パワハラが起こらない環境を作ることのほうがもっと重要です。最後にパワハラを防ぐための予防策をご紹介します。上司も部下も心配なく、働ける職場作りを目指しましょう。

パワハラの研修を実施する

パワハラを防ぐためには、職場のみんながパワハラについて理解しておくことが大切です。「パワハラとは何か」がぼんやりしているために、知らずしらずのうちにパワハラを行ってしまったり、パワハラと気づかず耐え続けてしまったりする人が出てきます。

パワハラとはどのようなものなのかについて、職場全体で共通の認識を持てれば、無意識化でパワハラが起こることを防げます。また、パワハラを行った場合には、どのような処分がなされるのかの情報を共通してのも、一人ひとりのパワハラ防止の意識を高めることにつながるでしょう。

相談窓口を設置する

パワハラの相談窓口を設置することで、問題が大きくなる前に従業員がパワハラについて相談しやすくなります。

パワハラの相談窓口には、内部相談窓口と外部相談窓口があります。内部相談窓口とは、従業員を相談員としておく方法です。それに対して外部相談窓口とは、弁護士や社会保険労務士、コンサルティング会社などにお願いする方法になります。

従業員が相談しやすい窓口とするためには、相談者の秘密が守られ、相談したことで不利益な扱いを受けないように体制を公表することが大切です。相談窓口に相談することで、どのような対応をしてもらえるのかも周知しておきましょう。

会社の「ハラスメント」に対する姿勢を示す

会社の「ハラスメント」に対する姿勢を示すことが、社内でのパワハラ防止につながります。経営理念や就業規則に明記しておくと効果的です。

従業員に共通認識がない会社ほど、ハラスメントが起こりやすい傾向があります。会社の方針として従業員みんなの考えに浸透していれば、ハラスメントは起こりにくくなるはずです。

パワハラの疑いがある部分を放置しない

少しでもパワハラの疑いがある場合には、放置しないようにしましょう。「パワハラなのでは…」と思ったときには、パワハラ被害者に声をかけたり相談窓口に相談したりすることで、問題が大きくなるのを防げます。

パワハラと疑わしいものを目撃しても、それに対して行動を起こすのは勇気がいるものです。しかし、「見て見ぬふり」はさらなる被害を生み出すおそれがあります。日頃から従業員同士がコミュニケーションをとりやすい環境を整えておくことが大切です。

社員同士、相手のことを考えた言動をとる

職場からパワハラをなくすためには、社員同士がお互いのことを考えて行動することが何よりも効果的です。パワハラの定義はあっても実際の判断は難しいものですよね。そして、同じ行為であっても受け止め方は人によって違います。

従業員みんなが気持ちよく働くためには、お互いに思いやりをもって接することが一番です。「パワハラとは何か」「どうすべきか」を知っておくことも大切ですが、「こう言ったら相手が傷つくのでは?」「どういう伝え方をすればいい?」とそれぞれが考えれば、自然と職場の雰囲気がよくなるはずです。

パワハラがない、全員が働きやすい職場を目指そう

職場というのは特殊な環境です。お互いに利害関係があり、みんなが自分の責任を果たそうとして頑張っています。必死になっているときはつい口調や態度も強くなりがちです。

少しの油断が、パワハラにつながってしまいます。世の中をよりよくするために働いているのに、社内で傷つく人が出るのは悲しいことですよね。しかし実際にパワハラによって傷ついて、心や体に不調を抱える人はたくさん存在します。

意識を高く持って、一つひとつを丁寧に対策することで、職場でのパワハラを防ぐことが可能です。パワハラ防止は、どんな職場でも取り組まなければならない義務。パワハラで傷つく人が出ない、働きやすい職場を目指しましょう。

羽莉花南

Writer

はとりかな|キャバ嬢、アジア女性研究機関勤務、さまざまな国の男性との交際経験を活かして恋愛を中心に女性のお悩みに寄り添う記事を執筆中。アメリカ→フランス→ベトナムと海外生活11年目。外国人夫、愛犬1匹、愛猫2匹と暮らしています。