

ワンオペ、苦しい……

夜中の授乳、溜まった家事、週明けの会議資料。「ワンオペって、こういうことなんだな……」と、誰にも頼れず一人ですべてをこなしていると、ふとそんな言葉が頭をよぎることがあります。
ワンオペとは、“ワンオペレーション(一人業務)”の略で、飲食業界などで使われていた言葉です。今では、ワンオペとは育児や家事、仕事を一人で抱え込み、サポートを得られない状態を意味するようになっています。
なかには、「私がやらなきゃ」と責任感を背負い込み、知らないうちに心身ともにすり減ってしまう女性も少なくありません。この記事では、そんなワンオペ状態を少しでもラクにする7つのヒントを紹介します。完璧を目指すのではなく、“自分を守る選択肢”を持つために、ヒントをチェックしましょう。
なぜ起きる?育児でワンオペになる原因とは?

育児のワンオペとは、ただ一人で子育てしているということだけではありません。頼れない環境、気づいてもらえない負担、そして「私がやるしかない」と思い込んでしまう気持ち。その背景には、いくつもの“見えづらい原因”が潜んでいます。
1.パートナーの協力不足
ワンオペ育児とは、育児や家事のほとんどを一人で担い、パートナーから十分なサポートが得られない状態を指します。ワンオペが起きる原因の一つが、パートナーの協力不足です。
「言わなくてもわかってほしい」と思っても、育児や家事とは目に見えにくい作業の連続。気づかないうちに、役割の偏りが当たり前になってしまうこともあります。その結果、ワンオペの状況は気づかれにくく孤独となり、心身の疲労やストレスにつながっていきます。
2.パートナーが育児参加できない状況
パートナーの無関心に限らず、「育児に関わりたいけれど、関われない」という状況でも、すれ違いは起こり得ます。たとえば長時間労働や夜勤などで物理的に家にいられなかったり、「どう接したらいいのかわからない…」と関わり方に戸惑ってしまったりするケースも少なくありません。
その結果、育児の負担が一方に偏ってしまいます。このような状況は周囲に相談しづらく孤独感が募りやすいため、心や体の疲れが見過ごされてしまうこともあるのです。
3.シングルで子育てをしている

ワンオペ育児とは、パートナーがいないシングルの子育てで起こりやすい問題でもあります。パートナーの協力がないなかで、育児・家事・仕事をすべて一人でこなす必要があるので、心身の負担は非常に大きくなります。
社会的な支援があっても、周囲の理解不足や孤立感から、ワンオペとは深刻なストレスや不安につながることも少なくありません。また、頼る相手が限られるため休息の時間も取りづらく、精神的な疲労が蓄積しやすいのも特徴です。
4.近くに頼れる人がいない
近くに頼れる人がいない環境は、育児や家事を一人でこなすワンオペの状況をさらに厳しくします。家族や友人が遠方にいたり、地域のつながりが薄かったりすると、疲れたときに助けを求めにくく、孤独感が強まっていきがちです。
孤立した状態は、心身の疲労が積み重なるだけではなく、精神的な不安やストレスの原因にもなります。さらに気軽に相談できる相手がいないことで、自己肯定感の低下や不安感が強まることもあり、ワンオペの負担を一層重くしてしまうのです。
5.社会のサポート体制の不十分さ
育児や家事を一人で抱えるワンオペの状況は、社会のサポート体制の不十分さとも深く関係しています。保育園の待機児童問題や、働く親を支える制度の不足、相談窓口の少なさなど、実際のところ頼れる制度が十分に整っていません。
このような環境では育児と仕事の両立が難しくなり、結果的にワンオペ状態が長く続いてしまうこともあります。誰もが気軽に相談できる場所や、利用しやすい支援がもっと増えることを祈るばかりです。
仕事でワンオペの状況が発生する原因とは?

担当業務の偏りや人手不足、情報共有の不足が仕事でワンオペが起きる主な原因です。一人に負担が集中し、負荷が増してしまいます。さらに周囲の理解不足やサポート体制の弱さも、ワンオペ状態を長引かせる要因となっています。
人手不足での業務集中
仕事でのワンオペとは、人手が足りずに業務が一部の人に集中してしまう状況を指します。とくに小さな職場やチームでは、誰かが休んだり辞めたりするとすぐに補充できず、どうしても一人に負担が偏ってしまいがちです。
忙しい時期にはその負担がさらに増え、体も心も疲れやすくなります。効率が落ちてミスも起こりやすくなるため、ワンオペの悪循環に陥りやすいのが現実です。このような状況を抜け出すには早い段階で気づき、少しずつ改善していくことが重要となってきます。
特定の人しかできない仕事がある

仕事でワンオペになってしまう理由の一つに、特定の人しかできない仕事があることが挙げられます。経験やスキルが必要な作業はその人にしか任せられず、ほかの人が代わりに対応できないこともしばしば。
だからこそ、どうしても負担が集中してしまいがちになります。とくに人手が足りないと、業務の分担が難しくなりワンオペの状態が続いてしまうことも。少しずつスキルを共有したり、教育の仕組みを整えたりすることが大切です。
助けを求めにくい雰囲気
仕事で忙しいとき、周りに助けをお願いしたくても、なかなか声をかけにくい雰囲気があることもありますよね。周囲の目が気になったり、自分が弱く見られたくないと思ったりして、頼るタイミングを逃してしまいがちです。
そんな空気が続くと、一人で抱え込んでしまい負担がどんどん大きくなってしまいます。黙って頑張ってしまう人ほど、実は誰かの気づきや共感を求めていることも。ワンオペの影には、見えない葛藤や迷いが隠れているのかもしれません。
ワンオペの状況をそのままにするとどうなる?

ワンオペの状態が長く続くと、心身に大きな負担がかかり、知らず知らずのうちに限界を迎えてしまうことがあります。気づいたときには、すでに疲れが蓄積しているかもしれません。
1.心身の疲労が限界に達する
ワンオペの状態が続くと、気づかないうちに心も体も少しずつ疲れていきます。「なんだか眠れない」「集中できない」「理由もなく涙が出る」そんなサインが現れたときは、心身が限界に近づいているのかもしれません。
毎日の忙しさに追われるなかで自分自身の不調に気づきにくいこともありますが、小さな不調こそ見過ごさないことが大切です。無理を続けてしまうと、体調を崩したり気持ちが落ち込んだりして、立ち止まらざるを得なくなることもあります。
2.周囲にイライラをぶつけてしまう
疲れやストレスが積もってくると、自分でも気づかないうちに家族や職場の人など身近な相手にイライラをぶつけてしまうことがあります。小さなことで怒ってしまったり、言わなくてもいい一言を投げてしまったりと、あとから自己嫌悪に陥ることも少なくありません。
本当は誰かを傷つけたいわけではなく、ただ余裕がなくなっているだけ。ワンオペの状況では、自分の感情に向き合う時間さえ取れないことが多く、それがさらに負担を増やしてしまうのです。
3.自己肯定感が下がる

ワンオペの状態が続くと、「ちゃんとできていないかも」「私が頑張らなきゃいけないのに」と、自分を責める気持ちが芽生えてしまうことがあります。誰にも頼れず結果が思うようにいかないとき、自分にダメ出しばかりしてしまうことも。
本当はひとりで抱えるにはあまりに多すぎる負担なのに、「できない自分が悪い」と感じてしまうのです。少しずつ自己肯定感が下がって自信をなくし、前向きな気持ちを保ちづらくなることもあります。
4.孤独感が深まる
ワンオペをずっと耐え続けていると、「私だけが頑張っている気がする」「誰にもわかってもらえない」と感じることが増えていきます。日々の忙しさの中で自分の気持ちを話す余裕もなく、気づけば心がぽつんと取り残されたような感覚になることも。
たとえ周囲に人がいても、気持ちを分かち合えなければ孤独は深まっていきます。誰かに頼ることや、ほんの少し気持ちを吐き出すことは、心を守るうえでとても大切なことなのかもしれません。
5.メンタルヘルスが悪化する

日々ワンオペをし続けていると、疲れや不安が積み重なり、気づかないうちに心の元気が少しずつ削られていきます。「なんとなく気分が沈む」「やる気が出ない」「前みたいに笑えない」そんな変化にふと気づくこともあるかもしれません。
忙しさに追われて自分の気持ちにフタをしてしまうことが続くと、メンタルヘルスのバランスが崩れやすくなってしまいます。心の調子にも波があることを知り、立ち止まって深呼吸する時間を持つことは、決してわがままではありません。
6.重大なトラブルが起こるリスクが高まる
ワンオペの状態が長く続くと、心にも体にも余裕がなくなり、思わぬトラブルにつながってしまうことも。うっかりミスや確認漏れ、小さな不注意が、思いがけない大きな問題に発展してしまうケースも少なくありません。
焦りや疲れが重なると、冷静な判断が難しくなることもあります。誰かと役割を分け合い、余裕を持てるだけで防げるトラブルはきっとたくさんあるはず。無理をしすぎないことが、結果的に周りを守ることにもつながります。
ワンオペ状況を打開するための7つのヒント

ワンオペのつらさは一人で抱え込まず、工夫や周囲の力を借りることで少しずつ軽くなります。これから、7つの具体的なヒントを紹介します。無理せず自分らしく続けられる方法を見つけていきましょう。
1.役割分担を見直す
ワンオペの状況を変える第一歩は、家事や育児、仕事の役割分担を改めて見直すことです。無理に全部一人で抱え込まず、パートナーや家族、同僚と話し合って負担を分け合いましょう。
言わなくても伝わるということは少ないので、遠慮せず気持ちを素直に伝えることが大切です。小さなことでも「ここを手伝ってほしい」と具体的にお願いすることで、お互いの負担がぐっと軽くなります。役割分担が見直せると、心にも少し余裕が生まれ、ワンオペのつらさを和らげる助けになります。
2.なんでも「完璧に」やろうとしない
ワンオペの負担を減らすには、「完璧にこなそう」と自分に厳しくしすぎないことも大切です。家事や仕事、育児において完璧を目指すと、疲れが増すばかり。時には「これで十分」と自分を認めてあげることで、心に余裕が生まれます。
ミスをおそれすぎず、完璧ではなくても大丈夫と受け入れることで、気持ちが軽くなり、長く続けられる自分のペースを作りやすくなります。少しずつ自分を労ることが、ワンオペからの脱出につながるのです。
3.同じ立場の人とつながる

ワンオペの孤独感を和らげるためには、同じ立場の人とつながることがとても効果的です。育児や仕事で似た悩みを持つ人と話すことで、「自分だけじゃない」と感じられ、気持ちが軽くなります。
SNSや地域の交流会、オンラインコミュニティなど、気軽に参加できる場所を探してみましょう。お互いの経験や工夫を共有することで、新しいアイデアが生まれたり、励まし合えたりします。一人で抱え込まず、つながりを持って心の負担を減らしましょう。
4.休憩時間を確保する
忙しい毎日の中でも、意識して休憩時間を取ることはとても大切です。ワンオペの状況では休む暇もないと感じるかもしれません。短い時間でも自分だけのリラックスタイムを持つことで、心と体の疲れが和らぎます。
好きな音楽を聴いたり、深呼吸をしたり──。ほんの数分でもリフレッシュすることで、気持ちがリセットされ、また前向きに動き出せる力が湧いてきます。自分を労る時間を意識的に作りましょう。
5.第三者に頼ってみる
ワンオペの負担が大きくなったときは、思い切って第三者に頼ってみることも大切です。親戚や友人、地域の支援サービスなど、身近に助けを求められる人や場所がないか探してみましょう。
一人で抱え込むと心身の疲れが増すだけですが、誰かに話を聞いてもらったり、具体的な手助けを受けることで気持ちが軽くなります。頼ることは決して弱さではなく、むしろ自分を大切にするための大切な一歩です。無理をせず、必要なサポートを上手に活用しましょう。
6.SOSを出すことに躊躇しない

ワンオペのつらさを抱えると、つい「自分でなんとかしなきゃ」とSOSを出すことに躊躇してしまいがちです。助けを求めることは決して恥ずかしいことではありません。むしろ自分の心や体を守るためにとても大切な行動です。
周囲の人に今の気持ちや困っていることを素直に伝えることで、理解や協力が得られることも多いです。一人で抱え込まず、勇気を出して声を上げ、ワンオペから抜け出す第一歩になります。
7.自分を最優先する日を設ける
忙しい毎日の中で、自分を最優先する日を作ることは心の栄養になります。ワンオペで頑張ると、つい自分のことを後回しにしがちですが、たまには自分の好きなことやリラックスできる時間にしっかり向き合いましょう。
お気に入りのカフェで過ごしたり、ゆっくりお風呂に浸かったり、小さなことでも自分を労る時間が心のバランスを整えてくれます。自分を大切にする日は、また元気に日々を乗り越えるための力になります。
少しでも周囲に頼れる自分になろう

ワンオペの状況から少しでも抜け出すためには、周囲に頼れる自分になることが大切です。最初は不安や遠慮があっても、助けを求める練習を重ねるうちに少しずつ自信がついてきます。
完璧を求めず、自分の弱さを認めることで、自然と支え合う関係を築けるようになります。頼ることは決して負担をかけることではなく、お互いを思いやるコミュニケーションの一つです。小さな一歩を大切に、少しずつ周囲とのつながりを深めていきましょう。
▼あわせて読みたい!一人の時間が欲しい…自分の時間が必要なときの心理状態とは?上手な過ごし方
