結婚のスタイルの一つ「別居婚」
好きな人と歩む人生、新たな生活の門出、二人だけの新居での日々…。憧れてはいたけれど、憧れだけではどうにもならないことが人生である。仕事の関係や居住地の関係で始まった別居婚が、意外と心地よい距離感であると気付くと同時に、最近増えているってほんと?
さまざまな結婚スタイルが増えている現代。別居婚もそのうちの一つです。
結婚後は、夫婦で同居するのが当たり前とされてきましたが、近年「別居婚」スタイルも増えつつあります。結婚し、夫婦ではありつつも別々の家で暮らし、週末などスケジュールを合わせて過ごすことで、適度な距離が保たれ円満に過ごすことができるとされています。
別居婚とは
「別居婚」とよく聞くようになった近年ですが、別居婚とはどのようなことで、単身赴任などとの違いはどのようなものなのでしょうか。ここでは、別居婚について詳しく解説します。
婚姻関係はあるが同居はしない
別居婚の特徴の一つは、婚姻関係はありながらも同居しないことです。離婚に向けたものなどではなく、関係は良好でありつつ住む家が別なだけなので、週末やスケジュールに合わせて一緒に過ごすことも。
カップルの期間と変わらないように感じる人も多いのですが、婚姻関係はあるため、夫婦であることに変わりはなく「帰る家が別なだけ」です。
お互いが別居に同意する必要がある
別居婚は一見お互いが勝手に始めるように見えがちですが、お互いが別居婚・別居自体に同意する必要があります。どちらか一方の勝手な都合や気分で始めたり進めたりするわけではなく、お互いが別居する環境やスタイルに対して同意していることで成り立つのです。
本来、婚姻関係が結ばれた状態だと法律的に「夫婦には同居する義務がある」とされています。ただし、双方の同意がある場合、この限りではないので二人で意見を合わせておくことが前提条件なのです。
離婚を前提にした別居や単身赴任とは異なる
「別居婚」と混同されがちなのが、離婚に向けた事実を作るための別居や単身赴任です。一見すると「別居」していることから同じと思われてしまいがちですが、これらは「都合上仕方なく」別居状態となります。
一方で、別居婚は「今のスタイルを崩したくない」「お仕事をするのにこちらの方が便利」「期間限定で自分の時間をまずは大事にする」などポジティブな意味合いのもと二人が同意し成り立ちます。
別居婚の離婚率はどれぐらい?
「二人で長くいるためのポジティブな結婚スタイル」としてイメージが先行している別居婚ですが、同居と同じく離婚しない保証はありません。実際に別居婚の離婚率は、同居している夫婦よりも高くなるのでしょうか?
統計データはないが全体の離婚率より高くなる可能性がある
別居婚自体が近年増えているスタイルであることから、統計的なデータは今のところあまりありません。しかし、同居している夫婦と比較して、全体の離婚率よりも高くなる可能性があるといわれています。
一緒に住んでいないことで夫婦である実感も少なく、離婚へのハードルも低くなることなどが理由なのかもしれません。
別居婚がうまくいかない…別居婚夫婦の離婚の原因とは
別居婚に限らず、結婚生活がうまくいく人、いかない人がいます。しかし、お互いの時間を大事にできるはずの別居婚がうまくいかない、別居婚夫婦が離婚してしまう、離婚率が高いといわれる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
離婚に対するハードルが低い
同居している場合、夫婦で過ごす時間が多いため、トラブルや価値観の違いがあってもその場その場で解決する必要があります。子どもがいれば尚更です。
しかし別居婚の場合は一緒に住んでおらず、自分のことは自分でできます。婚姻関係はあれど、自分のペースが保てる安心感や、たとえ離婚したとしても引越しなどの手間はないため、離婚へのハードルが低いといわれています。
お互いに自立しているため、経済面で不安がない
別居婚していることは、別居婚を実現できるだけの経済力がお互いにあることを示します。自分一人を養っていけるだけの経済力があり自立しているのであれば、離婚しても経済面で不安を感じることは少ないでしょう。
同居していれば生活費の割合や、共同名義での貯金の分配など手間がかかりますが、別居婚なら、経済面が不安で離婚に踏み切れないといったことは少ないでしょう。
パートナーの不貞
同居していてもパートナーの不貞はあるかもしれません。しかし、別居婚という離れている状態であればパートナーの不貞には気付きにくく、不貞行為に及びやすい状態ともいえるでしょう。
別居婚であることを理由に、不貞行為をしてしまった、されてしまったことで離婚につながるケースも少なくありません。お互いへの信頼が欠けてしまうと別居婚のスタイルは一気崩れてしまいます。
モラハラや暴力など、夫婦でいることが不可能
離れている分、別居婚はモラハラやDVとは無縁に思われがちですが、モラハラやDVへつながってしまうケースも多くはありませんが存在します。
週末に会うなど、スケジュールを合わせるタイミングでモラハラや暴力があると、夫婦でいることが不可能だと判断され、離婚に至るのです。
パートナーによる悪意の遺棄
別居婚は、二人の同意があることで成り立ちます。何年別居婚を続けるか、週末を含め会う頻度やタイミングはどうするかなど常にお互いのことを気遣っているからこそできるのです。
しかし、なかには正当な理由なく夫婦の同居義務・協力義務・扶助義務を果たさない…という人も。これらは悪意の遺棄となり大きな離婚理由となります。
別居婚に限らず、同居していてもよくある離婚理由ではありますが、別居婚は離れて暮らしているからこそお互いへの思いやりや気配りが、うまく関係を築くための重要な材料なのです。
別居婚がうまくいく夫婦の特徴
離婚につながってしまう別居婚夫婦がいる一方で、何年も別居婚なのに、仲が良く円満な夫婦もいます。この差にはどのようなことがあるのでしょうか?別居婚がうまくいく夫婦の特徴をご紹介します。
相手を信頼している
カップルであっても夫婦であっても、信頼関係がなければ成り立ちません。相手を信頼しているかどうかで、別居婚がうまくいくかどうか決まるといっても過言ではないでしょう。
毎日同じ家に帰ってくる生活と違い、時間軸も環境も付き合う人間のコミュニティも変わってくる別居婚。相手を信頼し「自分の嫌がることはしない」といった確固たる関係性が大切です。
経済的・精神的に自立している
経済的に自立していないと別居婚は成立しませんが、なにかあっても自分で対処できるくらい経済的・精神的に自立していることこそ別居婚がうまくいく理由の一つです。
心配したり頼ったりするのは大切ですが、離れて暮らしている以上すぐに対応できることは少ないでしょう。自分で解決でき、対等であり続けられることが大切です。
別居婚についてお互い同意している
別居婚は、単身赴任などの「どうしようもない都合」とは違います。どのような理由であれ、離れて暮らすことが自分たちにとってベストだ、とお互いの同意があることで成り立ちます。
お互いに別居婚について同意し「こういう理由だから別居婚をしている」と周りに言えるくらい、お互いにわだかまりのない状態であると、お互いの意見の風通しもよく別居婚がうまくいくでしょう。
コミュニケーションを大事にする
同じ家に帰って来れば、自然とコミュニケーションが生まれることも多く、夫婦の関係を維持できるでしょう。しかし別居婚は離れて暮らし、夫婦によっては国や県を跨いでいることも少なくありません。
お互いがお互いのことを気遣い、SNSやメッセージなどをはじめとするコミュニケーションを大事にする必要があります。一回一回のメッセージや電話、会ったときのコミュニケーションも含め、夫婦を長く続けていくためにも必要です。
別居婚のルールを決めている
「別居婚」と一言で言っても、夫婦である以上何もルールや決まり事がない状態よりはルールや決め事があった方が、うまくいきます。
大人なんだから…という意見もありますが、結婚生活は非日常ではなく生活であり、別居婚といえども夫婦であることに変わりはありません。夫婦でのルールがあるように、別居婚でもルールを決めておくと安心です。
別居婚のメリット
さまざまな角度からの見え方や、夫婦での考え方が反映される別居婚。離婚率が高くなる可能性や、うまくいかない理由をご紹介しましたが、別居婚がここまで増えているのはメリットがあるからです。ここではいくつかメリットをご紹介します。
それぞれの生活スタイルを維持できる
仕事や趣味、習慣など自分なりの暮らしや生活スタイルができていると、一緒に暮らすことが負担になってしまうことがありますよね。別居婚は、それぞれの生活スタイルを維持でき、自分にとって大事なことを大事にしつつも、相手との婚姻関係を結び続けられるメリットがあります。
特に、仕事や年齢制限のある挑戦と譲れないものがある場合や、生活スタイルをすぐに変えられない人にも向いているといえます。
衝突が起こりにくい
毎日一緒にいれば、相手の嫌なところや付き合っているだけではわからなかった部分も見えてきて、衝突することも増えてくるでしょう。
別居婚は、週末やスケジュールの合うときに一緒に暮らす半同棲のようなスタイルなので、衝突も少なく衝突しても話し合いやすい環境といえます。
法律婚の恩恵が受けられる
別居婚は、離れて暮らしていますが婚姻関係にあるため法律上は夫婦です。婚姻関係にない男女の関係は、法律上守られることが少ないのですが、別居婚は婚姻関係であると認められるため、結婚し同居している夫婦と扱いが同じです。
緊急性の高い連絡先、配偶者でなければ受けられない制度なども、同居夫婦と同様に受けることができます。そのため、別居婚であっても特に困らないと感じている夫婦も少なくありません。
相手のよさを感じたままでいられる
衝突が少なくすむことにも関係しますが、別居婚は相手の良さを感じたまま過ごすことができるのもメリットの一つです。
結婚することは、夫婦でこれからの人生を歩む「生活」です。嫌なところや「こんな人だったんだ」とハッとするようなことも出てくるでしょう。
別居婚は、生活ではありつつも別々で暮らしているため相手の嫌なところを一気に知ることも少なく、相手の良さを感じたまま過ごせる可能性が高くなります。
デートやお出かけがいつまでも新鮮
一緒に住んでいても、定期的にデートやお出かけをすることはあるかもしれません。しかし、毎日一緒にいれば、メイク前の状態やヘアサロンに行った後の変化なども日常になってしまいます。
別居婚であればデートやお出かけの感覚はカップルのときと変わらず、変化や久しぶりに会うトキメキを失うことも少なく新鮮なまま過ごせるでしょう。
別居婚のデメリット
メリットがある一方で、デメリットももちろんあります。別居婚は、お互いのやりたいことや生活スタイルを崩さずにいれる部分に注目されがちですが、同居していないからこそのトラブルや意見のすれ違いも起こるでしょう。そして離婚率が高くなってしまいがちなのにはこのデメリットも大きく関係しているといわれています。
ここでは、別居婚のデメリットをご紹介します。
お互い別居婚に同意していないと喧嘩になる
別居婚は、二人の同意のもと成り立ちます。どちらか一方が別居婚に反対している、あるいは乗り気ではない場合、喧嘩の原因となるでしょう。
別居婚を選択しなければならない状況もあるかもしれませんが、婚姻関係にある以上、二人の意見を合わせて新しい人生を歩んでいくもの。どちらか一方が納得していなければ成り立たない関係や生活スタイルであることはデメリットといえるでしょう。
家賃や生活費など出費がかさむ
二人で一つの家に住み生活していれば、負担は半分ずつですがお互いの家を持ちお互いの生活がある、というのは単純に生活費やかかる費用は倍になる計算です。
結婚している以上、二人での貯蓄なども考えなければなりません。しかし、各々で生活費や雑費がかかるため、いつまでも貯金などができず一緒に住むことができない負のループに陥ってしまう可能性もあります。
子どもができたときに悩む
結婚後、妊娠や出産を考えている場合、離れて暮らしているのはデメリットの一つです。
女性であれば何かあったときに頼る相手がいない、自分が働けない期間があるため生活費や家賃についての不安…。男性であれば、父親として実感が湧きづらい、地域の育児教室や父親教室にも行けないなど、子どもができたときに対応が難しいのはデメリットです。
浮気される危険性がある
一緒に暮らしていても不貞行為や浮気をしない保証はありませんが、離れて暮らしていれば相手がどこで何をしていてもわからず、嘘をつかれていてもそれらを知る術はありません。
浮気なども簡単にできてしまい、相手との関係や信頼を失う危険性も隣り合わせです。浮気しやすい環境であることや、相手のことを信じられるだけの関係値がないと疑心暗鬼にもなってしまいがちなのが別居婚のデメリットです。
気持ちが冷めてしまう可能性がある
会えば好きだと思うけど、離れている間に気持ちが冷めてしまった…という経験をしたことがある人は少なくないでしょう。カップルに限らず、夫婦でも同じです。
離れている時間が長ければ長いほど、気持ちが冷めてしまう可能性があります。コミュニケーションや、定期的に会うなど対策していても「夫婦ってなんだっけ?」「これでいいんだろうか…」と、冷めて気持ちが迷子になってしまうこともあるでしょう。
「別居婚のままでいいの?」考え直すきっかけ
別居婚をすでにしている夫婦の中には「別居婚をこのまま続けていいんだろうか」と考えている人もいるでしょう。また、これから別居婚をする人たちもいずれこのままでいいのかと考えるタイミングが出てくるかもしれません。
「別居婚のままでいいのかな?」と考えるきっかけになる出来事をご紹介します。
片方が同居したいと思ったとき
別居婚は夫婦そろって「別居婚がいいね」あるいは「しばらく別居婚だね」と、同意していることで成り立ちます。どちらかが「二人で暮らしたい」と思ったら、それは別居婚についてやこれからの二人の生活スタイルについて、考え直すきっかけといえるでしょう。
家を探すところからなのか、どちらかの家に住むのか、別居婚をいつまでするのか、なども含めて話し合いましょう。
子どもが寂しいと感じているとき
別居婚であっても、子どもがいるのであれば最優先すべきは子どもの意見です。別居婚は増えているとはいえ、一般的とは未だ言い難く、子どもが保育園や学校などで親が一緒に住んでいないことを不思議に感じたり寂しいと感じたりすることもないとはいえません。
子どもの気持ちや意見を聞いたとき、別居婚をどうするのか考えるきっかけになったという夫婦も多いでしょう。
片方が不倫したとき
別居婚のデメリットでもある、不倫や不貞行為のしやすさ。どちらかが不倫してしまったとき、別居婚が原因なのかを含め、話し合うきっかけになるでしょう。
別居婚がすべての原因ではないかもしれませんが、不倫しやすい環境になってしまった事実を受け止めつつ、今後どうしていくのか、夫婦で話し合うきっかけになります。
離婚したいと思ったとき
先述した不倫してしまったときも含め、どちらかがあるいは二人ともが「離婚したい」と思ってしまえば、別居婚を見直す必要があるでしょう。
別居婚をしていることで気持ちが離れてしまい、離婚したいと思ったのか、はたまた別の原因があるのかなど、夫婦で話し合うきっかけになります。別居婚は、離れて暮らしている分離婚へのハードルが低く「まあ、離婚してもいいか」と、軽率に答えを出してしまいがちです。
夫婦二人で別居婚を選んだ経緯や、別居婚を解消し一緒に住んでみるのかなどを話し合うことが大切です。
出費を抑えたいと思ったとき
婚姻関係が結ばれているのであれば、稼いだお金や貯蓄は二人の共同財産となります。子どもの有無に関わらず、二人で過ごしていく中で、貯金を増やしたい、一人で住むのではなく二人で住めば生活費がもう少し抑えられる、などのメリットも少なくありません。
出費を抑えて、貯蓄や他のことへのお金を増やしたいと考えているのであれば、別居婚をまずは考え直すきっかけとなるでしょう。
別居婚するときの4つの心構え
メリット・デメリット、離婚原因や逆にうまくいくコツなど、さまざまな意見がある別居婚。自分たちとって、別居婚はどうなのか、別居婚を考えたときに知っておきたい心構えをご紹介します。
連絡を欠かさない
夫婦になったといえども、コミュニケーションを取り続けることが大切です。一緒に暮らしていてもコミュニケーションが大切なのに、一緒に暮らしていない状態であればより大切なものになります。
連絡を欠かさず、お互いの近況やどんなことをしているのか誰といるのかなど、密にコミュニケーションをとることが大切です。
生活費について双方把握しておく
精神的、経済的に自立しているとはいえ稼いだお金を好き勝手に使ってもいいわけではありません。
今後二人で生活していくことを前提に、お互いの生活費やどのくらい何にかけているのかを把握しておくことは重要です。
二人で住むにはどのくらいかかるのか、逆に何にお金がかからなくなるのかなども含め定期的にお金を管理しておきましょう。一人暮らしと変わらないと感じてしまいがちですが、婚姻関係がある夫婦なので今後ともに生活する中でお金の話ができないと、ふとしたときに喧嘩の原因となりかねません。
定期的に会う
いくらSNSや電話を通してコミュニケーションをとっているといっても、実際に会わないとわからないことはたくさんあります。
仕事や距離など別居婚をする理由はさまざまですが、月に何度かなど、定期的に必ず会うようにしましょう。お互いの近況を話すだけでなく、別居婚で感じていることや、今後いつまで続けるのかなども定期的に話し合えるとすれ違いも防げるでしょう。
世間体を気にしない
増えてきた別居婚や、最近話題になっている事実婚など、結婚のスタイルや二人で生きていくためのスタイルが、大きく変わりつつあります。中には「そんなの結婚してるって言えるの?」「なにそれ?」など心無い言葉や奇異の目でみられることもあるでしょう。
しかし、別居婚をはじめとして二人で決めたことなら、自信を持って世間体を気にせず過ごすことが大切です。二人で歩む人生はこれから長く続くからこそ、その時々の決断を二人で納得して過ごすことが何より重要といえるでしょう。
夫婦で話し合って、その夫婦に合ったスタイルで過ごそう
これから長く続いていく人生、どんなスタイルがどんな考え方や暮らし方が、私たちに合っているんだろう。結婚して夫婦になる、夫婦になった後の暮らしは昔に比べて選択肢も多いし、私たちなりの道を見つけて私たちなりに歩いていきたい。
別居婚は、結婚後のスタイルの選択肢の一つです。同居するのが一般的ではありつつも、多様化する働き方や考え方、自分たちの経済力や人生において大事にしていることなど、譲れないこともあるでしょう。
大事なのは夫婦で話し合って、夫婦に合ったスタイルで過ごしていくこと。自分たちに合ったスタイルはどのようなものなのか、二人で納得するまで話してみましょう。