最近よく聞くモラハラってなに?
メディアやニュースでもよく聞くようになった「モラハラ」という言葉。聞けば聞くほど、見れば見るほど、私のそばにいる人の言動に当てはまる気がしてしまう。でも、そんなことはないはず、彼らは仕事ができない私をフォローしてくれるし、ダメな私の後ろで対応してくれる。ときに高圧的で厳しい言葉を遣うのは、世間でいうモラハラに当てはまるのかしら?
近年、職場や家庭の中でもモラハラが重要視される傾向にあります。男女関係なくその性質を持ち合わせているといわれています。無意識下であるため、自分ではモラハラしているつもりはなかったと後々気付く人も少なくありません。ここでは、モラハラとはどのようなもので、どのような悪影響があるのかを解説します。自分の周りの人にも当てはまる可能性があるかもしれません。少しずつ読みすすめましょう。
モラハラとは
モラハラはよく聞くようになりましたが、一体どのようなことを指すのでしょうか。自分のパートナーや周りの人はモラハラではないと思っていても、蓋を開けてみると当てはまる特徴が多く、モラハラだったと気付くことも少なくありません。ここではモラハラとはどのような状態か詳しくご紹介します。
モラルハラスメントの略称
モラハラとは、モラルハラスメントの略称です。モラル(道徳や倫理に)とハラスメント(嫌がらせ・いじめ)の意味を組み合わせた言葉。近年職場などでパワハラと同様に周知され、多くの場所やシーンで使われています。
モラハラをしている人に「モラハラをしている」意識はなく、モラハラだと周りから言われて気付く、さまざまな人から見てモラハラと判断されることがほとんどです。
モラハラの意味
モラハラは、モラル(道徳や倫理に)とハラスメント(嫌がらせ・いじめ)の組み合わせです。道徳観、倫理観を欠いた嫌がらせやいじめを意味します。上下関係だけではなく、夫婦・同僚・友人同士などでも起こり得る現象で、近年増加傾向にあります。
人格否定、侮辱、過度な監視などもモラハラに含まれます。
パワハラとの違い
同じように使われる言葉にパワハラがありますが、パワハラとモラハラの違いとはどのようなものでしょうか。
パワハラは一般的に優越的な関係、立場や役職などパワーバランスが二人の間に存在していることで生じる現象。また、モラハラは対等な関係性でも成り立ちます。
上司から部下、知識がある人や経験値がある人からない人に対する嫌がらせ行為はパワハラにあたり、同僚や夫婦で人格否定など嫌がらせをすることはモラハラにあたります。
職場でおこる主な5つのモラハラ
モラハラは主に職場で起こることが多いとされています。同僚などとの関係でも起こりやすく、後に「あれはモラハラだったのかも」と気付くことも少なくありません。
ここでは、職場で起こりやすいモラハラの例をご紹介します。職場において問題になることが多いモラハラ行為としては、以下の例が挙げられます。
人格否定をする
アルバイトであっても正社員であっても、皆同じように仕事をしています。能力の差はあれど、どのような仕事もお互いにカバーしながら進めていく必要があります。
しかし、少しのミスやわからないことを指摘し「脳なし」「バカ」「人としてやばい」など、ミスそのものではなくその人の人格を否定する侮辱的行為はモラハラです。
周りに聞こえるように叱る
仕事をしていれば、ミスや確認不足などは起こり得ます。ときには叱責しなければならないシーンなども出てくるでしょう。
しかし周りから見える場所で、また大きな声で、見せしめのように叱る・ミスを指摘するなどはモラハラにあたります。
通常の声のトーンや、二人で「なぜそうなってしまったのか」を話さずに大きな声で周りにも聞こえるように叱責すると、相手は萎縮してしまいミスを繰り返したり、最悪の場合人間関係の疲れやメンタルに不調をきたしたりする原因にもつながります。
プライベートに対して過度に介入する
職場での人間関係は重要ですが、あくまで業務上の仕事仲間であり友人や家族ではありません。友人や家族ですらも踏み入れてほしくない情報や領域があるものです。
プライベートへの過度な介入、過度な干渉など行動を見張る行為はモラハラのひとつです。パートナーの職業、年収、休日の予定や過ごし方、使っているものやメーカーの名前・金額を聞いてくるなど、話したくない聞かれたくないことまで介入する場合はモラハラ行為であるといえるでしょう。
仕事を妨害する
効率よく仕事をすることを多くの人が心がけています。モラハラと聞くと言葉や態度が注目されがちですが、仕事の邪魔になるような行為も立派なモラハラのひとつです。
- データなどを渡さない
- 業務に関わることに関して意図的に連絡しない
- 残業や膨大な量・未経験の業務をレクチャーなしに押し付ける
- 仕事をわざと渡さない
なども、モラハラと判断される行為です。
わざと無視する
意図的に連絡しないことにもつながりますが、無視することもモラハラ行為の一つです。わざと無視することは、相手の尊厳を踏み躙る行為ともいえます。
仕事は一人でするものではなく、多くの人が関わりチームで進めるもの。人間関係を構築するための会話やあいさつなどは当たり前の行為ですが、「聞こえているのに答えない」「目を合わせた後無視する」など意図的に無視する行為はモラハラです。
モラハラが増えていくと…
モラハラは、表立ってわかりやすいものもあれば、無視など「あれ?聞こえていなかったのかな?」とこちらが悪いかのように錯覚してしまうものまでさまざまであり、表面化するまで時間がかかります。気付かぬうちに横行してしまいがちな職場内におけるモラハラは、増えていくとどのような問題が起こるのでしょうか。
会社を辞める人が増える
パワハラもモラハラも、会社やそのグループから離職する原因につながります。会社を辞める人が増えれば業務に支障も出ますし、新しい人を雇うまでの業務量の調整など必要になってきます。
また、モラハラで会社を辞める人が増えることで、相手の精神面や活躍の機会を奪うことにもなりかねません。一人の人間の人生をも変えてしまう可能性があるのです。
社内の空気が悪くなる
モラハラが増えてくると「モラハラされている側」と「モラハラしている側」のどちらかしか存在しなくなります。陰湿なイジメに近いモラハラは気が付きにくい可能性が高いでしょう。モラハラを受けている人を助けると、今度は自分がターゲットになるかもしれないと考え、見て見ぬ振りをする人も出てくるはずです。
ギスギスした空気感は社内全体に広がることで、社内の空気感が悪くなったり業務にも支障が出てきたりする可能性があります。多くの人を巻き込むのです。
企業自体のイメージが悪くなる
人の口に戸は立てられないといいますが、口コミは巡り巡ってさまざまなところで耳にすることがあります。今ではSNSが発達しているので、モラハラを受けている人が簡単に告発・吐露できるのです。
モラハラが増えている会社、モラハラを受けて辞めた人が多い会社の噂や口コミは、マイナスなものほど多くの人に広がるものです。企業イメージが悪くなり、新規の採用はもちろん、取引先からも怪訝な目で見られることが増えていくでしょう。
モラハラしやすい人の特徴3つ
モラハラはさまざまなシーンで起こりますが、モラハラしやすい人にはいくつかの特徴があります。共通してモラハラしている人は、自分がモラハラしている自覚がないため、多くの場合「正当な怒り」「正当な対応である」と思い込んでいるのです。
ここでは、モラハラしやすい人の特徴のなかでも代表的な3つをご紹介します。
何でも他人のせいにする
モラハラする人の共通点として、なんでも人のせいにする他責思考の傾向にあります。「自分は正しい」「自分は間違った行動を正しているだけなのにできないあの人たちが悪い」という考え方のため、基本的に自分が悪いとは考えていません。
間違えた人やできない人にばかりフォーカスしているため、ミスそのものやなぜミスしたのかなどには目がいかないのです。なんでも他人のせいにし、自分はできる自分が正しいという価値観のもと業務を進めています。
自分を認めてほしいという気持ちが強い
自分を認めて欲しい、自分のことを褒められたい人が多く、承認欲求の強い人もモラハラする傾向にあります。我が強く自分の功績やできたことを褒めて欲しい、自分の功績であると周囲に認められたい気持ちが強いため、他の人が褒められたり良い評価を受けたりすると、機嫌が悪くなって無視したり業務を妨害したりするわけです。
自分を認め、相手を認めていくのがチームであり、仕事をする上では必要不可欠です。しかしモラハラする人からすると「自分がいなければ回らないはず」といった思い込みが強い場合もあります。
他人をコントロールしたい
チームで仕事をする上でスケジュール通りに進めることや、進捗の共有、一歩二歩先を見据えた行動は大切ですよね。モラハラする人の特徴として、自分の思った通りに他人が動かないと気に入らないことがあり、他人を管理・コントロールしようとする傾向にあります。
これらはプライベートの干渉や介入にもつながり、自分の理想や「こうだろう」と考えた通りに相手に対しても強要しコントロールしようとしているのです。
モラハラを受けやすい人の特徴3つ
モラハラをしやすい人がいるように、モラハラを受けやすい人もいます。本来あってはならないことですがモラハラを受けやすい人も多く、モラハラする人の対象となりがちです。
ここでは、モラハラを受けやすい人の特徴を同じく3つご紹介します。
人に言われたことをすべて真に受けてしまう
真面目で、人の言葉や言い方や言われたことに影響を受けやすい人は、モラハラを受けやすいといわれています。相手の言うことが正しいと思い込んでしまい「この人がこんなことを言うのだからダメなのは自分なんだ」「この人がそう言うならそうなのだろう」と考え、自分を否定してしまいがちです。
人に言われたことをすべて言葉通り真に受けてしまうので、知らず知らずのうちに精神的な疲労や否定が溜まってしまいます。
控えめで自己主張が苦手
控えめで優しく、自己主張が苦手な人はモラハラを受けやすい傾向にあります。本当は嫌だと思っていたり、自分の考えがあったりするにも関わらず、自己主張が苦手なため「何も考えていない」「なんでも許してくれる」と思われてしまいがちです。
モラハラに限らず、男女共に孤立してしまいがちなこともあり、社内でモラハラが横行していても、周りが助けづらい傾向にあります。
他人に流されやすく、相手に合わせてしまう
他人の意見を真に受けてしまう人、他人に流されやすく相手に合わせがちな人は、モラハラを受けやすい傾向にあります。
自分の意見よりも他人の意見を優先してしまうため、強い言葉で否定された時も「そうなんだろう」と考え、自分の考えが間違っているかのように感じてしまいます。モラハラを受けている側がモラハラする側からの攻撃を正当化してしまうため、ターゲットになりやすく、苦しい思いをし続けてしまうのです。
モラハラ発生を防ぐための対策法3選
モラハラしやすい人、モラハラをされやすい人、さまざまな人がいますが一緒に働いてみないとそんな人だとはわかりませんよね。就職活動や仕事で一緒になる前にモラハラしやすい人から距離を置くことができればいいですがそうもいかないため、モラハラを防ぐための体制を整えることが重要です。
では、モラハラを防ぐため、企業はどのような体制をとるべきなのでしょうか?
社内でハラスメントの研修を実施する
社内での研修項目に、ハラスメントについての項目も追加し、定期的に研修やセミナーを実施しましょう。現在多くの企業が取り入れています。
なかには「モラハラだと思っていなかった」と考える人も多く、そもそも何がモラハラに当たるかわからないまま接している人も少なくありません。どのような行為がモラハラに当たり、それらがどのような影響を及ぼすのかなどを研修やセミナーで学ぶ機会を設けると良いでしょう。
相談窓口を設置する
企業の中に限らず第三者委員会などの外部組織と連携し、相談窓口を設置するのもモラハラを防ぐ方法の一つです。
モラハラを受けている側からすると、どの人に相談すればいいのか、この人は信用しても大丈夫なのかなど疑心暗鬼になりやすく相談できないまま退職してしまうことも少なくありません。
「気軽に」「些細なことから」相談できる場所を設置しておきましょう。
社内で人間関係に関するアンケートをとる
社内で定期的にアンケートをとり、現在の職場環境について把握するようにしましょう。会社は組織です。立場が上になればなるほど会社全体の細々した部分まで目が行き届かないものです。
アンケートをとり、それら結果を公表し、どのように対処するかなど会社としての立場を明確にして社内に通知しましょう。人間関係については相談しづらい人も多いため匿名制や、上層部しか名前がわからないようにするなどの配慮も重要です。
実際にモラハラが発生したときの対処法
モラハラはどのような環境でも起こり得ます。モラハラの内容や程度もさまざまです。未然に防ぐことが大切ですが、もしもモラハラが既に職場内で起こってしまった場合はどのように対処すべきなのでしょうか?
人員配置などを見直す
モラハラが起こった場合、人員配置や部署替えなどの対策を講じましょう。チームや部署の場合、優先されるべきは被害者であり加害者ではありません。
モラハラの被害者の声を聞き、周りからの声も聞いたうえで人員配置などを考慮しましょう。部署を離す、仕事上でも関わりのない部署に移動させるなどの対処が必要です。
被害者のメンタルに対してケアする
モラハラは、加害者に問題がある場合が多いものですが、加害者の言動や行動はすぐに変えられるものではありません。モラハラを受けている側は被害者です。精神的苦痛や会社・人間関係への不信感など、人生が変わってしまうかもしれません。
第一に被害者に対してメンタルケアを手厚くし、モラハラに気づかなかったことやモラハラを受けさせてしまったことに対して謝罪しましょう。
ひどすぎる場合は証拠を集めたうえでしかるべき対応を
モラハラの内容や程度がひどい場合は、それらの証拠をしっかりと集め、企業や上司としてしかるべき方法で対処することが大切です。モラハラはひどくなると、人命にも関わります。
職場内でのいじめであることを認識し、重大さを理解し、しっかりと対処しましょう。監視カメラや本人の録音、社内からの声などあらゆる証拠を集めることも重要です。
モラハラを受けている側は自己申告できない場合も…
実際にモラハラを受けていても「モラハラを受けています!」と自己申告するのはとても勇気がいること。自分からそんなふうに言い出しづらい人ほどモラハラの被害を受けやすい傾向にあります。
大切なのは、企業として、常に人事・事業部内で風通しの良い環境を整えておき、何かあった際にすぐに誰かが動けるようにしておくこと。気軽に誰かに相談できる環境を用意しておくことです。
またモラハラを受けている場合は、信頼できる上司や同僚、会社の窓口などで少しずつ相談してみることも重要です。モラハラかどうかは定かではない状態であっても嫌な思いをしたことを共有できるようにしておくと良いでしょう。
放置すると危険なモラハラ。ちゃんと向き合って対策を
無視、連絡しない、目の前での悪口…。気にしなければいいと思ってた、なんとかできると思っていたけれど、もしかしたら私だけの問題じゃないのかも。もしこれが続いてしまったら…。
モラハラは、知らず知らずのうちに精神的苦痛を与え、麻痺してしまうことも少なくありません。しかし、モラハラは本来あってはならないこと。放置することで会社そのものだけではなく、多くの人間関係などにも影響します。
「これはモラハラだ、自分が我慢する必要はないんだ」と向き合い、自分を守り対処しましょう。